令和3年6月23日組織の構築

 このカテゴリーでは、住民自治組織(自治協議会、町内会、自治会等)の運営のうち、組織の構築(つくり方)について紹介していく。

東広島市 重見(篠原)裕次郎


地域運営組織の法人格について

 平成3年の地方自治法の改正により、地縁団体(自治会など)も「認可地縁団体」という法人格を持つことができるようになった。

・メリット…自治会名義で不動産登記ができる。

 規約に定める範囲内で権利能力を持つことができる。財産面だけでなく、規約に定められた目的の範囲内であれば、独立して取引主体あるいは財産の保有主体となることができる。(つまり、様々な契約が締結できる。)

・デメリット…規約に定める範囲で義務を負う。(総会の開催や、会計書類の作成などが義務になる。)

 法人市県民税の課税対象となり、毎年事業年度終了後の一定期間内に申告を行う必要がある。収益事業を行っていない場合は、減免措置があるが、申告と合わせて減免申請が必要となる。

 代表者、事務所等に変更があった場合、市長村長への届け出が、規約の変更には市町村長の認可が必要。

・認可要件…・地域社会の維持及び形成に資する地域的な共同活動を行うことを目的とし、現にその活動を行っていると認められること。

 ・その区域が、住民にとって客観的に明らかなものとして定められていること

 ・その区域に住所を有するすべての個人は、構成員となることができるものとし、その相当数の者が現に構成員となっていること。

 ・規約を定めていること

・市長村への申請書類…認可申請書、規約、総会議事録、構成員名簿、保有財産又は保有予定財産目録、事業報告書、申請者が代表者であることを証する議事録(就任承諾書等)

  

 法人化のメリットは、法人として、電話契約(インターネット契約)や事務所の賃借契約ができたり、不動産や車両の保有ができたりすることであるが、自治会館などの不動産を会長個人名義ではなく、法人名義とすることにより、会長個人に所得税の発生や相続トラブルが起きることを避けられることが大きい。つまり、自治会が不動産を持っていれば(またはこれから持つ予定があれば)法人化し、持っていなければ無理に法人化しなくてもよいと思われる。

 ただし、自治協クラス(小学校区)になると、区域住民の人数がとても多くなり(数千人規模)、「相当数を構成員とする」ことがとても難しくなるため、逆に法人化は難しくなってくる。

  

 上記「認可地縁団体」の項で述べた通り、自治協クラスの場合、相当数を構成員とすることが難しい。では、その他の法人格はどうであろうか。

 以下、内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局、内閣府地方創生推進事務局資料「地域の課題解決を目指す 地域運営組織 法人化のススメ」より説明を抜粋。

 

NPO法人(認定NPO法人)

 社会貢献活動を主な目的としている法人で、税制優遇措置も用意されています。

•不特定かつ多数のものの利益に寄与することを目的に活動する法人で、社員(会員)が10名以上いれば設立できます。また、登記費用も不要です。

•所轄庁への事業報告書等の提出や、その他の情報公開の義務があり、法人自らがこれらの義務を果たすことによって、行政や民間からの補助金・助成金を獲得しやすくなり、寄附の受け入れや事業を行いやすくなることにつながると考えられます。

•認定NPO法人になると、税制優遇措置があるとともに、一層の情報公開やより適切な業務運営が求められるため、高い社会的責任を有します(都道府県や市町村条例による個別指定を受けたNPO法人にも一部税制優遇措置があります)。

 

一般社団法人

 事業内容に制限がなく、設立までの手続きが容易な法人です。

•社員が2名いれば設立できます。また、都道府県や市町村による認可や認証がないため、他の法人に比べると設立までの手続きが容易で、短期間で設立することが可能です。

•事業内容に制限がないため、公益事業を行う団体だけでなく、非公益かつ非営利の事業を行う団体、収益事業を行う団体も含め、自由で自律的な活動が可能です。

 

合同会社

 出資額の大小によらず、全員が平等な立場で経営する法人です

•利益を得ることを目的とした営利団体です。設立には出資が必要ですが、議決権は誰がいくら出資しても1人1票のため、全員が出資額の大小によらず平等な立場で経営に関わることができます。

•株主総会や取締役会の開催が義務付けられていないため、迅速な意思決定が可能です。また、株式会社に比べて、設立の費用を抑えられます。

 

株式会社

 利益を得ることを目的とし、「稼ぐ組織」として発展させやすい法人です

•利益を得ることを目的とした営利団体です。設立には出資が必要で、出資比率に応じて議決権が異なります。

•金融機関からの借り入れ等、融資や資金調達の幅が広がり、経営の安定化と事業の拡大を見込みやすくなります。

•地域再生計画に位置付けられた小さな拠点形成事業を行う株式会社に個人が出資した場合、所得税の控除を受けられます(小さな拠点税制)。

 以上、内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局、内閣府地方創生推進事務局資料「地域の課題解決を目指す 地域運営組織 法人化のススメ」より

R030622法人形態の比較一覧表
R030622法人形態の比較一覧表
R030622地域運営組織の組織形態
R030622地域運営組織の組織形態

 

総務省「暮らしを支える地域運営組織に関する調査研究事業報告書」(平成28年3月)抜粋

 自治協の規模が大きかったり、活動が活発になったりしてくると、不動産の取得や賃借、収益事業などが発生し、法人格取得の話が出てくる。どの法人格を選択するかは、自治協の活動内容によるが、参考までに総務省の資料を見ると、NPO法人を選択する組織が多く、その次に認可地縁団体を選択している組織が多い。

 また、島根県雲南市を中心とした「小規模多機能自治推進ネットワーク」が広まり、こういった住民自治の新しい組織について、NPO法人に次ぐ新たな法人格の制定を模索しているところだ。


 R030623地域運営組織の法人格について

東広島市 重見(篠原)裕次郎